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手記

 
  大阪の色
  H14.7.5
中川雅夫さんが、故藤山寛美さんの追悼公演の後、松竹新喜劇を退団し「どんちょう会」を旗揚げされたのは平成5年のことでした。
中川さんとは、同年、劇団神戸公演「好色一代女」にゲスト出演された折、はじめてお目にかかりました。
その時の音楽が気に入ってもらえたようで、「今年どんちょう会を結成することになったので、是非音楽を・・・」と依頼を受けたのが、お付き合いの始まりでした。

松竹新喜劇はTVではよく観ていましたが、正直いって、そちらの方面の音楽は私には縁遠い分野と感じていました。
しかしながら、強く希望していただきましたので、とりあえず旗揚げ公演の音楽をお引き受けすることにしました。
第1回公演は同年10月、「居残り佐平次」(作:斉藤雅文、演出:夏目俊二)でした。
競演される俳優さんには、田中弘史さん、南条好輝さんなど親しい方が何人か居られたので、別世界へお邪魔するという不安に襲われることはありませんでした。

ただ、実際に音作りに掛かると、これまでの作風とは異なる音が必要でした。そのことを事後ながら明確に理解できたのは、本番を客席から観劇した時でした。
松竹喜劇を愛する人々が、何を期待して劇場へ訪れるのか・・・はじめて肌で感じたような気がしました。
ひねった音楽は不要である・・・ファンの音楽的嗜好を批判するのではありません、素朴で直接的な大阪庶民の楽しみ方があり、同じ関西でも、神戸とは少し異なる質の娯楽性と言えばよいでしょうか、大阪独特の人情に訴えかける音楽が必要と分りました。


「郷に入っては郷に従え」とは言いますが、かといって私自身が俄か大阪人になろうとしても無理な話です。
新喜劇系の音楽家はたくさん居られるのに、わざわざ畑違いの私を指名していただいたわけですから、むしろ異質性を新鮮味として出せるように工夫して行くべきと考えることにしました。

三周年記念には高田美和さんをゲストに迎えて「好色一代男」の上演となり、再度音楽の依頼がありました。
その後、「最上川一路」「河内けんか唄」「だんじりの佐吉」など担当させていただく内に、気が付けば早いもので今年は結成十周年記念「はるかなる虹」の公演を迎えることとなりました。

はるかなる虹 
出演:中川雅夫・高田美和・芦屋小雁・山本みどり他