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レポート

神戸民俗芸能団 ドイツ公演記 2004年4月30日〜5月7日


ドイツ・シュトゥットガルトの南(バスで約2時間)に、バーリンゲンという自然に恵まれた静かな街があります。そこに拠点をおくフローメルン・フォークダンスグループは、来年2005年には結成40周年を迎えます。
1990年に、フローメルン・フォークダンスグループ結成25周年の記念事業として国際民俗舞踊フェスティバルがバーリンゲン市で開催され、フランス、チェコ(当時はチェコスロバキア)、ポルトガルと共に神戸民俗芸能団も招待を受けました。以後、この国際的民俗舞踏祭は毎年行われ、神戸民俗芸能団の訪独は今回で4度目になります。私自信は1992年(神戸民俗芸能団2回目の訪独時)に、剣舞で参加させてもらいました。その時は期間も長く、何度舞ったのかよく覚えていません。後半、ボーデン湖畔で開催されたワンダーフォーゲル世界大会における国際民俗舞踊祭は、10ヵ国ほどが参加した壮大なものとなりました。
今回は、剣舞ではなく、日本グループの舞台演出を担当させていただきました。


 
   
参加グループ  生田神社舞楽・雅楽
生田獅子頭保存会
神戸太鼓保存会
石見神楽
弥生美容室(着付) 
  バーリンゲンでの民俗舞踊フェスティバルが、具体的にどのようなものかは、実際に参加した者でなければ分かり難いかも知れません。
会場(ホール)において、各国の民族音楽&舞踊の競演が繰り広げられる・・・一般的な国際交流公演ではこのような内容になるでしょう。
もちろん、バーリンゲンにおいてもそのような舞台がメインになるのですが、フローメルン・フォークダンスクラブが主催する企画には付録のスケジュールがあり、その内容が大きな特徴となっています。
    バーリンゲンの中心部にある教会前の広場で、
ドイツ、スウェーデン、チェコ、日本、各グループによるデモンストレーションが行われました。
  フローメルン・フォークダンスグループは、バーリンゲンの中心街から車で15分程の処に、自分たちのクラブハウスを所有しています。メンバーの多くは近辺に住んでおられるようです。ドイツの歴史を感じさせる建物の1階にはホール・厨房・事務所などが、2階には食堂と宿泊室などがあり、様々なボランティア活動に利用されています。
話によると、ハウスの改装はメンバーが自分たちの手で行なっているそうです。本年は、本館に隣接する建物を新たに購入して、宿泊専用施設に改造中でした。
クラブハウスで食事や宿泊の世話をしてくれるスタッフは、ほとんどがボランティアのようです。ドイツでは男子は18歳で兵役の義務がありますが、兵役の代わりにボランティアを選択することもできるそうで、スタッフにはそういう青年も居りました。
   
クラブハウスの正面
 
クラブハウスの隣の建物を改装中
   
クラブハウスの向かいにきれいなレストランができていました。
 
道を渡った広場ではクラブのフォークダンス祭が行われます。
    クラブハウスの玄関前に信号が一つ設置されていますが、近辺には信号はほとんどありませんので、かえって不自然に感じました。 
  本館には数十名宿泊でき、今年は、スウェーデンとチェコ(チェコ共和国)のグループが泊まり、日本グループのほとんどは、前回と同じく、当クラブのメンバー宅に数名ずつに分かれてホームステイさせてもらいます。私は、当地でのプログラム運営のため、団長他数名と共にクラブハウスに滞在することになりました。
12年前、私はJ.Sさんのお宅にホームステイさせていただきましたが、今はメンバーから離れて居られるようで、ホームステイ先の名簿には載っていませんでした。しかし、クラブ前でのフォークダンス祭にご夫婦で見に来られており、広場でバッタリ出会うことができました。お二人は大変感激してくださって、次ぎの日のフリータイムに、ライン滝までドライブに誘ってくださいました。噂に聞く、ドイツ・アウトバーンのスピードをはじめて体験しました。(汗) 
   
懐かしいご夫婦と再会
  話は出発時に戻りますが、
関西空港からフランクフルトへの便にトラブルがあり、フライトが9時間も遅れてしまいました。予定では、フランクフルトから国内便でシュツゥットガルトへ行き、そこからバスでクラブハウスへ、そして20時からバーリンゲン市長との接見が行なわれることになっていました。
フランクフルトからの国内便はすでになく、結局、フランクフルトで荷物を降ろし、航空会社が用意した臨時バスでバーリンゲンへ向かうことになりました。バスで約4時間、ようやく到着すると翌日の午前3時頃になってしまいました。ところが、クラブハウスに着くと、ドイツ、スウェーデン、チェコのグループ、それにホームステイ先の家族の人達が路上に群がり、歓声を上げて我々を迎えてくれたのです。
それまでの疲れも一気に吹き飛び、マンフレッドさんをはじめ、なつかしいメンバーたちと再会を喜び合いました。
   
  バーリンゲン・国際民俗舞踊祭そのものは、バーリンゲンのシティーホールにおけるフローメルン並びに参加各国の競演という、ごく一般的な企画なのですが、ここでの特徴は、それ以後の日程にあります。
バーリンゲンでのメイン公演が終わると、スウェーデン・チェコ・日本の3グループは一緒に附近の市や街を訪問します。一見観光のようですが、内容は巡業です。
今回の場合には、スウェーデン・チェコ・日本で臨時に結成された混成芸能団?が各地で公演を行なうという仕掛けです。
バスを連ねてクラブハウスを出発し、目的の街へ着くと、ひとつふたつ観光の後、市長さんたちとの接見があり、夕方から街のホールにて公演します。終わって再びバスに揺られてクラブハウスに帰ると、夜の10時か11時・・・翌日は別の街へ、同じような日程・・・こんな感じです。
観光旅行を兼ねた海外公演のようなつもりで参加すると、当てがはずれて不平が出るかも知れません。
しかし、芸能活動と考えるなら、ここでの付録公演は非常に有意義なものです。当初は各国のグループはそれぞれ個別の存在なのですが、やがて自然な一体感が生まれて、全体としての公演の成功を共に望むようになります。
本番前にはお互いに声を掛け合い、舞台袖の使い方もお互いに配慮し合い、客席に回っては声援を送り、公演が終わるとねぎらい合う・・・異なる民族、異なる芸能の集団なのに、まるでひとつの芸能グループのように思えてくるのです。
このような一体感を生み出させる源は、いうまでもなくフローメルンというグループの力でしょう。国際交流事業といっても、形式的、名ばかりのものが多いですが、このグループの活動は、大地に根を下ろした本物の大樹のように思えます。
   
  夜遅く、公演を終わってクラブハウスに戻ると、今度は自分たちの楽しみとしての演奏・歌・ダンスの時間がはじまります。クラブハウスではビールやワインなどは飲み放題です。(本当に飲み放題なので驚きです)
どこかのグループのバンドが楽器を持って集まって来て演奏が始まります。すると周囲では歌やダンスも始まります。どれだけレパートリーがあるのか知りませんが、次ぎから次ぎへと夜明け頃までつづきます。
様々な民俗楽器があり、演奏者が居り、歌手が居り、踊り手が居て、尋ねれば何でも教えてくれるし、演奏やダンスに加わることも自由です。お互いの音楽や舞踊や文化の違いを話し合うこともできます。
もちろん言葉の壁はありますし、他国のグループに割り込んで行くのは少し勇気が要りますが、入って行けば、そこには音楽・舞踊という共通語が在りますので、民族の隔たりはほとんど感じません。
今回はチェコのバンド・リーダーでバイオリニストのマレックさんと親しくなれました。吟詠の音階などにも関心を持ってくれて、今はメールでやりとりをしています。
    赤のTシャツがバンドリーダー・マレックさん
  チェコの民俗音楽は、ハンガリーから伝わったツィンバロンという楽器を中心に、バイオリン、ビオラ、ベース、クラリネットなどで編成されます。
バンドとダンスチームは、ひとつのグループだそうです。ダンスチームのリーダー、ダナさんは振り付けをされます。振り付けといっても、まったくの創作ではなく、伝統的な舞踊を元に新しい振りを工夫して行くやり方で、剣詩舞の振りつけ方針に似ています。メンバーは各自それぞれ別の職を持っているようですが、演奏にもダンスにもプロ級の実力を感じました。
フォークダンスは広義には、民俗的な音楽(歌)と舞踏が一体になった芸能と解釈できるでしょう。フォークダンスは自然発生文化であり、そもそもは自分たちの為に行なわれたものですが、最近では鑑賞用芸能としての発展も見られ、いろいろな点で吟剣詩舞と共通するところが多いと思います。
   
   記録
  4月30日
関西国際空港出発 9時間の遅れにより、翌午前3時頃バーリンゲン到着
  5月1日
午後、バーリンゲン市中央部にて公演(ドイツ・スウェーデン・チェコ・日本)
     
  5月2日
バーリンゲン・シティーホールにて公演(ドイツ・スウェーデン・チェコ・日本)
     石見神楽のリハーサル
   
ドイツ・フローメルン・グループ(子供たち)
 
フローメルン・グループ
   
スウェーデン・グループ
 
   
チェコ・演奏グループ
 
   
チェコ・ダンスグループ
  5月3日
ウルム聖堂見学
   
ウルムの街
 
大聖堂に登り街を一望
   
ドイツと神戸との橋渡しをされ、いつも同行してくださる中谷氏と記念撮影
 
ドナウ川のほとり
    フローメルンのバンドリーダー、ユェルクさん(Vl)が、昼食時にガイデと呼ばれるバグパイプを演奏してくれました。
   
バート・ザオルガオでの歓迎式
 
    バート・ザオルガオのホールにて公演(スウェーデン・チェコ・日本)
  5月4日
テュービンゲン見学
 
   
ネッカー川の流れる学生の町
 
  ヴィルトベルク見学  
    ヴィルトベルクでは、ビンガー市長の手厚い持て成しを受けました。
市庁舎において、学生たちが歓迎のギター演奏をしてくれました
   
拍手が鳴り止まずアンコール
ヴィルトベルクにて公演(チェコ・日本)
  5月5日朝  
   
向かって右端の髭さんが、フローメルン・リーダーのマンフレッドさん
この日の朝、チェコチームが帰国するので、クラブハウスで歌ったり、踊ったり、話をしたりして、皆で夜を明かしました。
  5月5日 夜   
    クラブハウスにて、さよならパーティー(日本グループ主催)
日本チームが日本料理を作って、クラブのメンバーやホームステイ先の家族を招待するパーティー。
  5月6日  
   
空港まで見送ってくれるマンフレッドさんたち
シュトゥットガルト空港へバスで出発
フランクフルト空港で乗換
  5月7日
関西国際空港着