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レポート

スメタナホール仕込 Setting for the stage 2007.3.29

 
  朝食の後、演出の海老澤先生、照明の月橋さん達と共に、舞台仕込みの為スメタナホールに向かいました。楽屋口は会館の裏手にあり、ドアを開けると、いかにも時代を感じさせるエレベーターと、それを捲いて昇る螺旋階段がありました。

1911年に建設されたこの市民会館はもうすぐ創立100年を迎えます。内装は比較的質素ですが、曲線的な造りはどっしりした風格を漂わせています。
反響は非常に長く、大聖堂の中に居るようです。
   
  日本のホールの場合、半日とか終日の使用契約が普通ですが、ここは時間単位での使用契約になっています。仕込みの為に契約した時間は、午前9時から11時まで・・・、その時間内に仕事を終えなければなりません。
今回、大道具は使いません。その代わりに舞台背後にスクリーンを垂らして、プロジェクターで風景写真などを映写する方法を用い、海老澤先生が担当します。
添乗員さんたちは梱包して運んできた武器類や筝などを開けたり、楽屋の準備をしたり・・・皆大いそがしです。
通訳のチェコ人が2名来てくれているのですが、ホールの関係者に対して、あちらからもこちらからも矢継ぎ早に質問が飛んで、対応に困る様子が顔に出てしまいます。
   音響の仕込み
  さて、音響さんは・・・と探すと、のんびりとスピーカー・コードを準備しているTシャツ姿の男性が一人・・・まさか、音響スタッフは彼だけ?
確かめるとそうでした。少し不安になりました。

<第1の問題>
16chの小型ミキサー、MDデッキ1台、CDデッキ1台などが、観客席の最前列の下手脇にこじんまりと置いてあります。
まさか、この場所で、しかもこの設備で?・・・不安が募ります。
デッキはBGM用とカラオケ用2台あればいいのですが、1台はMD、1台はCDです。幸い、さんしゃいん社がMDとCDの両方で同じものを編集してきてくれていたので、なんとかセーフです。
しかし、MDをテストしてみなければ何とも言えません。日本の機材で編集したMDディスクが海外の機材では読み込めないことがあるからです。CDはそういう時のための予備でした。
MDは無事鳴りましたので、BGMはMDを、カラオケはCDを使うことで何とかクリアーです。ただし、本番の途中で、MDかCDにトラブルが発生したらお手上げです。

<第2の問題>
ホールには大抵、スタッフ同士が連絡を取り合うインカム(インターフォン)が備わっていますが、どうやらここにはない気配です。
月橋さんは調光室に、海老澤先生はプロジェクター操作で2階席の最後部に、私は舞台前の隅に・・・もし本番中にハプニングが生じても連絡を取り合うことができません。ハプニングが起きないことを祈るのみです。

<第3の問題>
設置してあるアンプやスピーカーは、このホールの大きさに適するパワーのものではなさそうです。吟剣詩舞が普段日本の大ホールで行なっているようなPA効果を期待することは難しいでしょう。
もっともこのホールは生演奏専用のホールですから、PA設備は補助的なもので事足りるのでしょう。

<第4の問題>
問題は他にもありました。マイクの本数はたくさんあるのですが、肝心のミキサーのインプットが16chしかありません。MDとCDに4ch、司会者用マイクに1ch必要です。必然的に使えるマイクは最大11本ということになります。
マイクを使うのは吟詠だけではなく、筝に3本、バンドに9本必要です。
使い回しをすれば良いわけですが、舞台転換の際、マイクを移動するスタッフが居ません。舞台袖には数名の先生方が舞台係として居てくれますが、先生方には出番もあり、また担当する仕事もたくさんあって、これ以上仕事をお願いすることは気が引けます。かといって音響さん一人では転換に時間がかかってしかたありません。

結局何ひとつ安心できないまま早11時になってしまいました。この辺りになると、私も「まあ、どうにかなるだろ」と変に落ちついてしまいます。それこそ「ノー・プロブレム」です。