吟詠伴奏曲が聴者に与える効果 |
詩心表現の重要性は吟詠に限らず歌の分野全体に共通することです。
歌曲においては詩心は歌詞だけはなく旋律でも表現されます。良い旋律は歌手が必要以上に声に感情を出さずとも詩心が音楽的に伝わるように作曲されています。
それに対して吟詠の伝統的な旋律は、一題一題の詩を表現する個別の旋律ではありませんので、旋律的詩心表現力に関しては不利と言わねばなりません。
その弱点を補おうとして声に感情を出しすぎると、芝居掛かった吟になってしまったりします。
本来の吟詠の発声を崩さずに音楽的な表現力を増幅させる方法の一つとして伴奏曲を利用することが考えられます。
「吟詠伴奏曲ついて その1」で解説させていただきましたように、同じ旋律も伴奏によって異なる雰囲気に聴こえます。伴奏は作曲の仕方によって様々なイメージの響きを作り出すことができます。
同じ人でも服装によってイメージが変わりますが、そのことに似て、伴奏は吟の雰囲気を聴感的に変化させることが出来るわけです。 |
吟詠伴奏曲の作曲手法 |
漢詩・和歌と一言でいっても、過去から現代まで中国詩と日本詩を合せると天文学的な数になり、詩の表現内容も分類し難いほど多彩です。筝と尺八のみなど小規模編成の伴奏が似合うものもありますし、企画舞台などで劇的効果が求められる場合にはフルオーケストラのような重厚な伴奏が必要になることもあります。
また、伴奏の作曲手法も色々考えられます。
邦楽的な手法もあれば、洋楽的手法や歌謡曲的手法もあるでしょう。あるいは他民族音楽的な手法も不可能ではありません。吟詠に伴奏を付けることは昨日今日始まったことではないのですが、何らかの手法が確立されているわけではなく、各音楽家が試行錯誤を重ねながら進めているのが現状です。 |
伴奏曲選び |
ある詩を吟じるのにどの伴奏曲が適しているか・・・で悩まれる方は多いかもしれません。
音楽から受ける印象は人それぞれですから、最終的には自分の感性に従うべきでしょう。ただ、人前で吟じる場合には聴く人達の感性で評価されることになります。自分の好みと聴く人々の好みが一致すれば良いのですが、必ずそうなるという保証はありません。
このあたりが難しいところですが、自分が吟じようとする詩から言語以外のイメージ、たとえば風景や状況などを思い浮かべ、そのシーンのBGM (映画などのバックに流れる音楽)のように伴奏曲を聴いてみると選びやすいかも知れません。
それらしい伴奏曲が見つかると、次は詩の流れと伴奏曲の流れを突き合わせてみます。
絶句を例に挙げますと、起句・承句・転句・結句の構成のされ方は様々です。
たとえばすべての句が「静」的な表現でまとめられたものもあれば、起承句は静的でも転結句は動的に変化するもの、また逆のもの、あるいは句毎に雰囲気が変わるもの・・・など一様ではありません。
全体的な雰囲気から選曲した伴奏でも、起承転結の雰囲気の変化すべてにぴったりくるものは少ないかも知れませんが、そこは既成の伴奏曲ということで多少の妥協はお願いしなければなりません。
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